12/03
【みなと新聞主催セミナーレポ】三者三様のふるさと納税活用方法!
山口県下関市に本社をおく、水産専門紙のみなと新聞。
先日、みなと新聞が主催するセミナーに弊社の角田が登壇しました。
セミナーのテーマは、「水産事業者によるふるさと納税活用方法」🐟
事業者の方々も登壇し、ふるさと納税を活用するに至った経緯や活用方法を角田とトークしました。
今回登壇した団体は、福岡県柳川市の本吉屋、島根県浜田市のシーライフ、北海道知内町・上磯郡漁業協同組合。
本ブログでは「セミナーレポート」と題し、当日のトークについてまとめました。
登壇した3団体のお話を順番に公開していきます!
①300年続く老舗企業が初めてふるさと納税を活用、その理由は?
最初に登壇したのは、創業1681年の福岡県柳川市にある本吉屋。
うなぎ料理の専門店で、看板メニューの「うなぎのせいろ蒸し」は柳川市の代表的な料理です。
そんな本吉屋は、今まで通販事業を行ったことはありませんでした。
しかし、コロナ禍の影響で福岡県に構える店舗のお客さんが激減。
「このままじゃまずいぞ」と、ふるさと納税の活用に舵を切りました。

▲本吉屋が出したお礼の品
商品開発で一番苦労したのは、せいろ蒸しのご飯の解凍方法。
せいろ蒸しは、うなぎの下に4~5cmのご飯の層があります。
このご飯を、お店で出すようなふっくらした状態にするにはどうすればいいのか。
弊社の角田と相談しながら、試行錯誤しました。
最終的に、蒸す工程を再現するため電子レンジで温めた袋をしばらく置いてもらうことに。
試行錯誤した甲斐あって、自宅でも本場の味を再現することに成功!
「長年受け継いできた味にはプライドもありますので、変な物は絶対に出せないという気持ちがありました。”やっぱり本吉屋のせいろ蒸しは美味しいね”と言ってもらえるように企画しました」。
商品開発だけではなく、商品のPRにも力を入れたそうです。
温め方を寄付者の方々に理解してもらえるよう、手順書を入れるだけでなくYoutubeで手順の動画を発信。
そのような工夫が実を結び、報道にも取り上げられました。
「商品が完成しておしまい」ではなく、”食べる”という体験価値をより高めるため、情報発信にこだわる。
長年、お客様が満足することを第一にしてきた本吉屋らしさがここでも生きてきたのです。
そして、「通販事業は今後どんどん力を入れていきたい。特にふるさと納税をしっかりとした柱に育てていきたい」と話します。
最初に自社通販事業ではなく、ふるさと納税に取り組んだ理由を聞くと、こう答えていました。
「やはり商売ができるのは地元の方々のご協力があってのこと。また、せいろ蒸しは柳川市を代表する食なので、そういった文化も全国に発信したい。そのような想いとふるさと納税がマッチしたんですよね」
300年続く老舗企業の本吉屋。コロナを契機に、初めてオンライン事業に舵を切りだしました。
その中でも、最初にふるさと納税を活用した理由。
それは、長年支えてくれた地元への感謝と、地域の代表的な食文化を継承してきたという誇りでした。
伝統を受け継ぐ本吉屋様の新たな挑戦はこれからも続きます。
②カッコいい水産業の実現を目指し、故郷を盛り上げる
2番目に登壇したのは、島根県浜田市で水産加工業を営むシーライフ。
浜田市は島根県で一番大きな港町で、昔から水産加工業者が多く存在していました。
また、のどぐろの産地としても有名な地域です。
15年前に創業されたシーライフは、そんな浜田市で一番の若手企業です。
登壇した川上さんは6年前にUターンをし、お父様が創業した会社を共に伸ばしてきました。
6年前に帰ってきた当時の様子を、川上さんはこう振り返ります。
「若い方が少なくて、ベテランさんやご高齢の方々が頑張っていました。せっかく特産品にのどぐろがあるのに、なかなか発信してくれる人がいなくて。もったいない状況でした」
シーライフがふるさと納税を活用しはじめたのは、2014年頃。
まだふるさと納税が一般的に浸透してない時期でした。
特に初期は、自治体以上に事業者が率先して自分たちの返礼品をPRしていたのだそう。
その後、ふるさと納税市場の成長とのどぐろ人気の高まりにより、お礼の品の寄付件数は伸びていきました。
シーライフは、ふるさとチョイス主催のイベントである大感謝祭に5年連続で参加したりと、イベントに積極的に参加しています。
「ふるさと納税は寄付者さんと直接つながれる点が特長です。特にふるさとチョイスで寄付をされる方は、産地とのつながりを求める方が多い印象を受けます。商品や私の経験、産地の現状についてお話をしました」。
自社よりもまずはのどぐろや地域のPRに力を入れてきた川上さん。
長期的に見た時に、ファン客や市場の確保につながると思ったのだそう。
さらに、お礼の品も寄付者様との一つの接点だと考え、届いた時の見栄えを意識したり、焼き方の説明書や浜田市の紹介カードを入れたりしています。
ふるさと納税はリピーターが多い市場。リピーターを増やすための様々な工夫を行ってきました。
ふるさと納税をきっかけに自社だけでなく、仕入れ先の企業も業績が伸びているそうです。
川上さんは、「地域全体で成長していることを実感している」と話します。
そんな川上さんの目標は、かっこいい水産業を実現すること。
「シーライフで働いてみたいな、かっこいいなと思えるような取り組みを行い、もっともっと地域と会社を元気にしていきたいです!」
川上さんがUターンをした当時、浜田市は水産資源など地域の魅力を発揮しきれていない状況でした。
そんな状況を打破するため、”寄付者”を”地域のファン”へと変えていった川上さん。
ふるさと納税の知名度がまだ低かった2014年頃から、寄付者とのつながりを第一に活動してきました。
コロナ禍の今も、寄付者との接点を大事にしてきたからこそできることがたくさんあるようです。
「かっこいい水産業を実現する」。
そんな目標を口にできる人がいる地域の未来は、きっと明るい。そう感じました。
③寄付件数0から大躍進を遂げた、小さなまち
最後に登壇したのが、北海道知内町役場と上磯郡漁業協同組合です。
人口4100人の小規模自治体だからこそ抱える課題、そしてそれに対する施策についてお話ししました。
知内町がふるさと納税を始めたのは2008年。当初はお礼の品はなく、お礼状のみで取り組んでいたそうです。
そんな中、2013年は寄付金が0の状態に。テレビで寄付金が多い自治体と比較されたこともありました。

▲首都圏向けに出された広告
そこから知内町は大躍進を遂げていきます。
翌年からお礼の品をつけるようになり、さらにふるさとチョイスの活用、お礼の品の充実化、サイトのレイアウト変更、首都圏向けの広告運用などなど。
様々な施策の末、飛躍的に寄付件数を伸ばしていきました。
寄付が急激に伸びたことにより、新たな課題も生まれてきました。
というのも、事業者の数や規模は大きくないため、生産が追いつかない可能性も出てきたのです。
そこで、寄付件数や在庫の状況を事業者と密に連携をとったり、数量限定の取り扱いでカバーをしていきました。
さらに、小さな町内で新たな返礼品を発掘することには限界があります。
そこで知内町産の牡蠣を町外の業者が加工してできた「牡蠣のオリーブオイル漬け」のように、原材料を町内、加工を町外にすることでお礼の品を開発してきました。
続いて上磯郡漁業協同組合は、漁業の現状やガバメントクラウドファンディングについてお話ししました。
知内町の漁業は、獲る漁業から育てる漁業に変遷を遂げてきたのだそう。
以前はイカやホッケなどを獲る沿岸漁業が主流でしたが、海洋環境の変化などもあり、現在はウニやアワビを養殖しています。
そんな中、育てる漁業を推進していくためガバメントクラウドファンディングに挑戦しました。(現在募集終了)
ガバメントクラウドファンディングとは、ふるさと納税を活用したクラウドファンディングのことです。
そこで集まった寄付金は、藻場環境の改善や漁場監視体制の強化など、漁業を未来に残していくための様々なプロジェクトに活用されます。
実はこちらのガバメントクラウドファンディングは、知内町と上磯郡漁業協同組合、そして委託会社で連携をして進めています。
ガバメントクラウドファンディングというと、多くは自治体が主体となって進めるため、事業者が積極的に関わることは少ないのが現状です。
しかし知内町では、上磯郡漁業協同組合や委託会社と密接な連携を行い、寄付金の使い道も事業者が主体となって進めています。
自治体と事業者、両者が密接に連携できることは、小さな自治体の強みでもあります。
寄付件数がゼロだった苦い経験を乗り越え、知内町だからできることを追求した結果が今に繋がっている、そう感じました。
と、ここまで3業者さんのご紹介をしてきました!(最後まで読んでくださった方ありがとうございます…!笑)
ふるさと納税というと、自治体にスポットが当てられることが多いのですが、今回の主役は事業者でした。
コロナ禍でふるさと納税を始めた事業者もあれば、制度開始からすぐに力を入れだした事業者もある。
そして、地域にはまだまだふるさと納税に対して想いを持つ事業者さんたちがいます。
これをきっかけに、お礼の品を選ぶ際は、それを手掛ける事業者さんたちにぜひ着目してみてください!