ふるさとチョイスブログ

日本最大のふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」のスタッフや地域の方が、オススメのお礼の品や地域の魅力など、ここだけの様々な情報を発信しています。

2022
02/01
03_自治体担当者リレーブログ

【岩手県西和賀町】応援を力に度重なる災害に立ち向かう、西和賀町の挑戦!

岩手県西和賀町ふるさと振興課の高橋直幸と申します。

以前、西和賀町でふるさと納税を担当していました。今ではふるさと納税担当から離れて久しいのですが、現在携わっている業務を通じて再びふるさと納税に関わることができました。更に思いがけず、こうして寄稿の機会までいただくことになりました。

こうした流れの中で感じることは、地方自治に関する数多ある業務の中で携わった者のキャリアとも言える経験則を直接的に生かすのは難しい面も持ち合わせますが、ふるさと納税という業務は地方自治の原点である地域の課題解決やそれに伴って必要となる財源の確保とも結び付ける事ができる事から、直接の担当でなくともやりようによってノウハウやネットワークを活用することができる、というもの。更にはこれまでふるさと納税を担当していない職員であっても課題解決の手法として活用することができる関わりしろの広い業務である、という事です。

様々な形で話題となっているふるさと納税の制度ですが、これまで西和賀町では制度を手段として活用する事で、様々な課題解決に結び付ける事ができました。携わってきた者として制度が今後も社会の中で有効に活用されるように、期待と願いを込めながら振り返りたいと思います。

 

【はじめに、西和賀町について】

西和賀町は岩手県の西部、秋田県との県境を接する町です。東北を縦断する奥羽山脈の麓に位置し、町の北部には和賀岳がそびえ、南北に流れる和賀川から水を貯えるダム湖の錦秋湖があります。俳人の正岡子規が投宿した湯本温泉や古くからの湯治場として知られる湯川温泉、JRの駅舎と温泉が併設されている「ほっとゆだ駅」など、個性豊かな温泉を有しています。

四季折々の顔を見せる錦秋湖

 

JRの駅舎に温泉が併設されているほっとゆだ駅

 

「どこにもない四季と湯の里」という観光キャッチフレーズのとおり、春の山野草、夏の新緑、秋の紅葉、冬の雪とメリハリの効いた四季は特徴ですが、国の特別豪雪地域にも指定されているほど冬は圧倒的で積雪は2mにも及び、たびたび全国の降雪・積雪ランキングに顔を出します。

西和賀町の歴史は、この雪との闘いといっても過言ではありませんが、近年ではニュースポーツである「雪合戦」の大会やミニかまくらにローソクを灯す「雪あかり」など雪が観光振興に活用されるほか、山々にしみ込んだ潤沢な雪解け水から質の高い農産物が生み出されるというストーリーのもと「ユキノチカラ」というブランドが立ち上げられ、産業の振興にも結び付くなど雪の存在が見直されています。

雪国ならではのイベント雪あかり

 

雪をテーマに商品開発が進められたユキノチカラプロジェクト

 

【西和賀町のふるさと納税】

西和賀町におけるふるさと納税の取り組みは2014年から本格的に進められました。

平地が極端に少ない中山間地の西和賀町では企業や工場の誘致が進みにくいことから、特色ある気候と風土によって培われる山菜や乳製品など地域資源を活用した産業振興が進められており、こうした取り組みの中でブランド山菜の「西わらび」や質の高い生乳を活かした「プレミアム湯田ヨーグルト」の生産、地域ブランド「ユキノチカラ」立ち上げによる商品開発を進めていますが、販路の拡大やプロモーションは継続的な課題となっていました。

そうした中で出会った制度がふるさと納税でした。

当時、岩手県では北上市がふるさと納税を積極的に活用しており、市のふるさと納税を復興支援員である登内芳也さんがけん引していました。隣町の縁で西和賀町も北上市から紹介を受けてふるさと納税の検討が始まり、当時自分は町の6次産業化を推進するポジションでしたので、ふるさと納税を活用することにより町で生産された農産物や加工品の販路を作るという切り口から関りが始まりました。

西和賀町も今でこそ専任の職員が配置されていますが、この時はまだ幅広い業務の中のひとつでしたので、地域の農産物を使ってお台場で催される大規模なパーティや、地元信用金庫との経済連携協定、そして合間に組み込んだ県内外での物産展など同時に進めており、ふるさと納税の立ち上げのみに集中できないタイトなスケジュールの中でしたが、トラストバンクの丁寧なバックアップを受けながら進める事ができました。

須永珠代社長(現トラストバンク会長)にも西和賀に足を運んでいただきながら、生産者や事業者に向けてふるさと納税の説明をしていただくなど機運を高めながら進める事ができました。

そして忘れもしない、2014年11月17日にオープンを迎えることができたのですが、その瞬間に、たくさんの寄付が寄せられた時の感動は今でも忘れる事ができません。あまりに嬉しかったので町長に、どうですかふるさと納税は、とメールをしてしまったほどです。

 

【災害寄附の取り組み】

本格的に取り組みを始めて以降、返礼品、寄附件数、寄付額と順調に増え、町の中でも徐々にふるさと納税の認知も進んできましたが、2015年に西和賀町を災害が襲いました。土砂崩れにより西和賀町と北上市を結ぶ唯一の国道である107号が通行止めとなり、土砂崩れ箇所にほど近い道の駅「錦秋湖」が閉鎖に追い込まれてしまったのです。

道の駅は町のフロントショップとして年間約8000万円を売り上げる施設でしたので、道の駅を管理する町の第3セクターはもちろん、道の駅を販路としている町内のお土産品、生産者も大きな影響を受ける事になりました。

 

時期を同じくして、ふるさとチョイスでは災害があった自治体をふるさと納税制度を活用した寄付で応援する災害支援の取り組みがスタートしました。

そうした制度が立ち上がったというのは承知していましたし、実際に北上市の登内さんからも薦められたのですが、東北では2011年に未曽有の災害と称される東日本大震災が発生したこともあり、人的災害も無く局地的な災害に留まっている西和賀の災害を発信することには躊躇いがありました。

しかしながら須永社長(現トラストバンク会長)から、そうした気持ちを見透かされた電話があり「地域の課題はそれぞれ、ふるさと納税の制度を活用して地域の課題解決につなげてほしい」という誰もが惚れてしまうであろう男前の一言に背中を押され、西和賀町でも緊急寄附の取り組みを進めることになりました。

 

西和賀町はもちろん、全国的にも取り組み事例が少ない中でのスタートでしたが、ここでもトラストバンクから大きなサポートを受けながら進める事ができました。どのくらいかというと当時の上村龍文取締役が自らドローンを持参し、それを操縦し災害現場の様子を空撮していただいたほどです。撮影した映像は緊急寄附のページで公開することで災害の生々しさをリアルに伝えることができました。

 

また、取り組みの中で思いがけない応援を受ける事ができました。

北上市をはじめ、山形県天童市、福島県大玉村、長崎県平戸市、宮崎県綾町といったふるさと納税の先進自治体がそれぞれの自治体のサイトで西和賀町の災害支援の取り組みを紹介してくれたのです。普通に考えると寄附を奪い合うライバルとも言えなくも無いのですが、全国で走っている仲間を応援することで、お互いに高め合っていくということと制度を発展させていくことの大切さを皆が認識していたと感じています。こうした自治体間の支え合いは災害時の代理寄附という形で現在にも引き継がれています。

 

こうした波及効果に後押しを受けて約1100万円という多くの寄付を寄せていただくことができました。

いただいた寄付は災害に負けずに西和賀町の魅力を発信するべく、移動する道の駅としてキッチンカーを導入し、盛岡市のさんさ踊りや北上市のみちのく芸能まつりなど県内外で開催されたイベントに出張することができました。

2016年3月には東京のミッドタウンで開催されたイベントにも出展し、首都圏の寄附者にもキッチンカーをお披露目する事ができました。六本木ヒルズの夜景をバックにエメラルドグリーン眩しい西和賀のキッチンカーが走るシーンは恐らく見る人にとってはアンバランスに映ったかもしれませんが、自分にとってはとても感慨深く映ったシーンでした。

動く道の駅として活躍するキッチンカー

 

ミッドタウン東京の復興デザインマルシエにも出展

 

この取り組みは、災害支援のスタートアップ時の取り組みだった事もあり映像としても取り上げられました。是非、こちらもご覧ください。

メディアが取り上げない災害に、救いの手を。”ふるさと納税”の緊急寄附で、走り出した希望のキッチンカー。

 

【ふるさと納税は課題解決に直結する関わりしろのある制度】

このように、ふるさと納税の業務を通じてダイナミックかつドラマチックな仕事を経験させていただきましたが、公務員にとって人事異動は宿命です。2017年に自分もふるさと納税から離れることになりました。

SNSなどで各地で活躍する仲間を横目で見ながらも、ふるさと納税の思い出も少しずつ薄れてきていました。

 

そうしたとき、2021年5月に再び大規模な地すべり災害により国道107号に亀裂が入り通行止めとなり、道の駅も閉鎖に追い込まれました。

道の駅を管理する第3セクターは再び地域の資源を収入に変える場を失い、前年から続くコロナ禍とも重なり経営状況は急速に悪化をたどり、道の駅を販路としていた町内の事業者と生産者にも再び大きく影響をもたらす事になりました。

再び通行止めに追い込まれた国道107号

 

このとき自分は地域振興担当課で勤務していましたが、急きょ第3セクターの支援担当として併任辞令を受ける事になりました。

3セク経営の立て直しに向けた支援に奔走する中で、現場から再び災害寄附の取り組みができないかとの声が上がってきましたが、自分もふるさと納税から離れて久しく、取り組みを進める自治体も増え、この間にふるさと納税も色々あり制度自体も変遷を迎えていましたので、どのように動いたら良いものかと悩みました。

担当時の縁を頼って登内さんに相談したところ、偶然にも長崎県平戸市の黒瀬さん、三重県玉城町の中野さん、山形県天童市の沼澤さんが岩手に遊びに来るとのこと、まさに奇跡のタイミングです。飛び入りで参加させていただく事になり、戦略会議(つまり飲み会)が催されることになりました。

飲み会の場では当時の先進自治体会議さながらにアツく語り合い、災害支援寄附に加えてガバメントクラウドファンディングの同時活用を提案いただき、その場からトラストバンクの川村社長にも話をつけるという相変わらずのスピード感で物事が進むことになりました。

 

ふるさと納税界ではレジェンドと言う事ができるほど知らない人がいないであろうメンバーなのですが地域の活性化や課題解決につながる事であれば場所や時間を忘れてアツく盛り上がる事ができる、自分も大好きなメンバーです。だからこそ、こうして時代を築く事ができたのだと思います。

そのメンバーとこうして再び一緒に仕事ができる喜びは、当時をともに駆け抜けた者の特権であり、人生を再び交錯させる事が出来たと言えば大袈裟かもしれませんが、ふるさと納税の黎明期から各地で取り組んだ仲間との邂逅はそのぐらいの感動がありました。

 

現在はお互いに置かれた立場は違いますが、相互に高め合うという思いが根付いているものと感じました。また、ふるさと納税の担当ではない自分ではありますが、ふるさと納税は課題を解決したいという思いを強く持つことで、こうして戻る事が出来る場所なのではないかと感じる機会となりました。

冒頭の繰り返しになりますが、ふるさと納税の制度は地方自治の原点である地域の課題解決やそれに伴って必要となる財源の確保につながるものです。そこにネットワークが加わる事で取り組みを磨き上げていく事ができるものと感じています。

 

【みんなで はやく とおくへ】

このように方面からの応援を受けることで、西和賀町では全国初となるガバメントクラウドファンディングと災害寄附の同時活用をスタートする事ができました。相談から一か月にも満たないスピード感での取り組みはタイムリーだった事もあり地元新聞の一面で扱われるなど、制度を活用する事で局地的な災害となっている状況に再び光を当てる事につながりました。

まだまだ取り組みの途中ではありますが、ここまで多くの方の応援を受けたプロジェクトに成長しましたので、今回の企画は成功させなければならないと思っています。ぜひ、応援をよろしくお願いいたします。

 

▼ガバメントクラウドファンディング
「災害による道の駅の閉鎖に負けずに西和賀町の魅力を全国に届けたい!」

https://www.furusato-tax.jp/gcf/1582

▼災害支援寄附
「令和3年国道107号地すべり災害」

https://www.furusato-tax.jp/saigai/detail/1204

 

自分が普段から心に置いている言葉で「早く行きたければ一人で行きなさい、遠くへ行きたければみんなで行きなさい」というアフリカのことわざがあります。

岸田総理が所信表明演説で述べられて話題になった言葉ですが、物事に当たる際のスピードと持続性について示唆しているのと同時に、いかに優れたアイデアや企画であったとしても持続的なものにするためには、みんなのもの、じぶんごとにしていく事が必要という意味からも、地域の中で動く際には大切にしている言葉です。

しかしながら今回の取り組みは全国初の試みでありながらも、多くの方に応援していただいたお陰で、かつスピード感をもって実行することができました。今回の取り組みだけに限らず、これまでを振り返ってみても、本当に多くの方に関わっていただく中で、ここまで来ることができたものと感じています。

こうした繋がりには本当に感謝しかありませんし、そこには制度を活用してより良い社会を作るという責任にもつながっています。更には、ふるさと納税は寄附という形で、多くの方と関わりを持つ事ができる制度です。

多くの思いを束ねていくことで、更に速く更に遠くへ行く事ができるものであると改めて感じています。

 

 

ふるさと納税の制度が、今後も社会の中で有効に活用されることで輝きを増す事ができるよう、期待と願いを込めて。

 

 

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