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【石川県輪島市】伝統工芸を後世に引き継ぐために
山形県天童市の沼澤さんからバトンを受けた石川県輪島市の新谷益巳です。
ふるさと納税の担当になって5回目の春を迎えました。
定期的に人事異動が行われる官公庁の中では、在籍期間が長い方になるかもしれません。
その間、全国各地の自治体職員の方との貴重な出会いがありました。
これはふるさと納税の担当職員でないと経験出来ない醍醐味の1つだと思います。
輪島市は、日本海に突き出した自然豊かな能登半島の北西にある街です。
というよりも、「輪島塗」の産地です!と言った方が分かるかもしれませんね。
人口は約2万7千人。日本の総人口は2010年(平成22年)から減少していますが、輪島市では約70年前の1950年(昭和25年)から人口減少が始まっています。
このままでは、永きにわたり受け継がれてきた、日本が世界に誇る伝統工芸「輪島塗」が私たちの世代で途絶えてしまう・・・そんな危機感が常につきまとっています。
輪島塗の起源は諸説ありますが、現存する最古の輪島塗は大永4年(1524年)の作といわれ、室町時代にまで遡ります。
現在のような、生漆と米糊を混ぜたもので布を貼る補強(布着せ)と、地ノ粉(輪島産珪藻土)を混ぜた漆で下地処理をする技術は江戸時代前期の寛文年間(1661~1673年)に確立され、約350年かけて創意を重ね、技を磨き、常に進化と深化を続けてきました。
高度経済成長期後半の1969年(昭和44年)から生産額は増加し、安定した日本経済の成長にも支えられ1991年(平成3年)には過去最高の180億円に達しました。しかし、バブル崩壊以降、生産額は年々減少し、現在は40億円前後で推移しています。なんとピーク時から約80%も減少しています。必然的に従事者数も減少し、最盛期から約50%減の1,400人となっています。
生産額の減少は長期化した景気低迷やライフスタイルの変化、多種多様な生活用品の普及などが原因ですが、おそらく、他の伝統工芸の産地でも同じような状況ではないでしょうか?
そんな伝統工芸の救世主となるのが、ふるさと納税です。
ふるさと納税のお礼の品とすることにより、一定の需要を確保し、従事者の雇用継続が可能。
いただいた寄附金を伝統工芸の保存・継承のために使う。
このサイクル循環が持続可能であれば、伝統工芸を後世に引き継ぐことが出来ます!
昨年度、熊本地震で被災した陶器を輪島塗の職人が金継ぎ(呼び継ぎ)という技法を使って新たな器として再生する事業に取り組みました。
この事業に取り組むことにより、これまでなかった新たな技法が生まれました。
また、輪島塗は国の重要無形文化財に指定されています。
その保持団体である、輪島塗技術保存会が輪島塗の技法を駆使した直径1メートルの地球儀を製作しています。
完成は東京オリンピック後の2021年度です。
この2つの事業は、いただいた寄附金によって実現できた事業です。
輪島市のような過疎地域では、ふるさと納税はなくてはならない制度です。
制度に対する賛否はありますが、
この制度の命運を握っているのは、自治体職員です。
その良識が問われています。
今さえ良ければいいのですか?
この制度も後世に引き継ぐことが私たち自治体職員の責務だと思ってます。
次は、日本に一つしかない油を含んだ希少な温泉がある、北海道豊富町の能登屋将宏さんです。
▼石川県輪島市のページ
https://www.furusato-tax.jp/city/product/17204
▼熊本地震で壊れた陶器を「金継ぎ」で甦らせるプロジェクト(2017年10月29日終了)
https://www.furusato-tax.jp/gcf/191